これから起こす話であっても
何かが起きる話ではない
本題に繋がる前兆ではなく
独りの、たった独りの独白
これは、そんな何の前触れでもなければ、ただの前置きである。
本題を前に、独り、ぎこちないながらも話を溢すだけだ。
それが過ぎてしまえば、これから前向きに話を進めていくが、今は話を後ろ向きにした体で始めていきたい。
……後ろ向きにさせたのでは‥前置き、というよりかは‥前書きでも後書きの方に意味する後置き、になるかもしれないが。
◆
今こうして…この地にいるのも、ここまでやってきたのも‥その間が随分長く思えば、実際はそこまで大した道のりではなかったとも思える。案外短かったとさえ言える。
それは、道中僕がそう感じてきて過ごしたのではなく、それらが過ぎた後の今だからこそ、さぞ振り返るがように‥はたまた感じてきたんだと言い張るかの如く感想を抱いているのだろう。
だから、ひょっとしたら僕でもこう思っている。
実のところそこまで僕は、気にもしていなければ気にも留めてもおらず、ただ何も感じていないのだったら結局僕は相も変わらず今までの事の顛末なんてさも、そこまでの価値なんてなかったのだろうと。
どっちだってよかったんじゃないかと…そう、思っていたんだと。
だとして
だったとして
だとするならば
案の定、僕は僕であり続けて、僕が僕であるように、我ながらそこまで感傷に浸っていたわけでもなかったのを、再確認してしまいそうだ。
かといってそのまま再確認したとして、ただそれだけの話だが。
これ以上思うところなんかそんなにない…かな。
否、そんなこともなかった。
どうしてか、僕はこんな不安に抱えてまで思っていたものを抜かしてしまった。最近のことだというのに。
危うく、事態の重さを抱えていたにも関わらず、僕はそのまま、事の重さを抱えたままで思い過ごす羽目になるとこだった。
そう、僕が言うところのつまり、懸念すべきことというのが、"僕が本当に目指していたのは何だったのか"という、たった一つの疑念とも言うべきものが、生じたとも生じてしまったとも言うし、どっちにしても生まれたからだ。
一体僕は、これから何処に辿って行き着いてしまうのだろうか。
今でも分からない。
分からない。
何がしたいのか。
自分がよく一番分かっていないといけない事だというのに。
僕がそれを一番よく分かっていない。
僕でも分からない。
僕が分からない。
僕は僕が分からない。
それでも僕の歩みを、今更ここで止めようという気にも、考えも、思い浮かばなかった。
今ここで何が何を為"したい"のか、よく分からないまま、僕が歩みを止めてしまったのなら、それは本当に死に体のままでなってしまうのだから。
それは、それだけは‥僕でも勘弁したいとこだ。
【序章】<ヒーロー観察! 忍び寄る影の組織!>
[目的の喪失は自己の喪失]
闇、裏が存在するこの世界には、そういった不可解すぎる魑魅魍魎等を、超常的存在を解明せんとする組織がいた。
1人、その組織に所属する研究員であり、対超常的存在のスペシャリストの称号を持っていた、無我乃 覚(ムガナイ サトリ)は、ある研究対象の一つを1年間もずっと観察し続けていた。
「今度は死人が出る街ときたかぁ。不律博士から話は聞いていたけど、彼の行く先々はどうしてこうも事件を呼び寄せつけていくのやら。」
1秒ものの空白を置いた後、口角を吊り上げるようにニタリとした笑みを浮かべる。
「お陰で研究が捗るなぁ~、ここんところ暇せずに済むから私助かっちゃうよ。」
「でも、そろそろ彼の物語はいよいよ大詰めといったところか。これから先彼には居て貰った方が助かるし、ここは接触するいい機会と踏み込もう。私様も躍り出ちゃうよ。舞台だけにね。」