日本某所、裏……どころか闇の闘技場がそこにあった。
そこではたった今、虐殺が行われていた。
「『神断ち』がああも呆気なく……」
観客の誰かが漏らす。
異界の神と手を結びこの世界に現れる神を何体も殺した神殺し達。
果ては己の主ですら殺したと言われる五名の異能者達が、たった一人の男を前に膝を屈していた。
(隙が、隙ができないっ!)
(五人がかりで、死角だって……)
(背中どころか、横にも目が付いてるのかよ、この野郎!?)
あらゆる小技はまるで見えているかのように機先を制して潰し、
(嘘だろ……並大抵の異能者どころか、神すら真正面から受けることを避ける一撃を)
(真ん前から拳を打ち込んで……完璧に散らした……)
大技はあえて打たせておきながら、真正面から『破壊』する。
まだ神断ち達の身体は動く。いや、動かざるを得ない。
勝ち筋と思っていた行為を一つずつゴリッと心ごとすり潰されて、現実逃避もままならないのだ。
そして、目の前の悪魔は心が死んでいる余裕すら与えない。裂けるように口が開き、悪魔のような笑い声を漏らす。
「どうした。まだ動けるだろう。どれ、確かめてみるか」
悪魔は……虎堂は数歩離れていたはずの男の側に立っていた。瞬きの間に、そこまで移動したのだ。そして、男の二の腕を持ち上げる。
「やめっ」
誰かが叫ぶ。言い切る前に、持ち上げられた男の二の腕ににょきっと新たな関節が生まれる。被害者の腕はそう評するしか無い動きをした。男はたまらず絶叫した。
「ほら、まだ元気があるだろう?」
虎堂が『新たな関節』をぐっと握ると、男は再度絶叫する。その後、男の二の腕は元通りになっていたが、顔は真っ青でとても元気がある状態とは言えない。
虎堂は再び一瞬で距離を取ると、腕を広げて『神断ち』達を一望した。
「ほら、組の事情なんざ抜きにして遊ぼうじゃないか。取るんだろう、この首を」
己の首をトントンと叩く。常人に比べれば太い、という範疇で収まる首である。
しかし、それを切り取る難しさは子供の腕で大樹を伐るが如く。
それでも『神断ち』達は挑む。挑まざるを得ない。挑まないという選択肢はさっき消えた。
――この男を満足させれば、それでこの地獄は終わる。
もはや誰のものかわからぬ脳漿が滴る拳。それを無造作にタオルで拭いつつ、虎堂はK-phoneに出る。
「魔獣?」
話を聞き……口端を釣り上げる。
「本日二つ目のメインディッシュとは嬉しいね。勿論、行くとも」
通話を切り、タオルを放り捨てて虎堂は立ち去る。
「あ、ちょっと!? 虎堂さん!? まだ交渉が終わって……」
物腰のヘニャヘニャした、しかし得体のしれない青年が虎堂に声を掛けるが虎堂の耳には入っておらず……青年は仕方なしに、強面の男の方へ振り向いた。
「あー、ウチのボス別件入ったみたいです。ま、ま、交渉担当は僕なんで。もうええでしょ、あの人おらんくても、そっちは勝負しようないし……」/