時刻は深夜。街は静まり返っている。
円卓の騎士専用寮キャメロットもほとんどの部屋には明かりが灯っていなかったが、一つだけ―204号室には明かりがついていた。
暗がりの部屋には、テーブルの上のランプの明かりだけが灯っていて、アッサルトの考え深げな顔を照らしていた。
全体に明かりをつけず、自分の近くだけに明かりをつけるのは、アッサルトの昔からの癖だった。こちらの方が気持ちが落ち着き、思考が進むのだ。
アッサルトは悩んでいた。最近実にいろいろなことが彼の周りで起こったからである。
以前の任務以来、アッサルトは自身のひそかな特技であった「絵を描くこと」を本格的に始めてみた。路上で絵描きの仕事をして、少しではあるが稼ぐことができた。SNSでアカウントを作って自身の描いた絵をあげたりもしている。これはゴルフォに教わりながら始めたのだった。ゴルフォはアッサルトよりも呑み込みが早く、この世界の文化のことをすでにたくさん知っていた。
ゴルフォとは、2月あたりでは以前のように活発に話をしていた。しかし、最近ではあちらからあまり話しかけてこず、外に出てくることも少なくなった。いや、出ているといえば出ているのだ。ゴルフォが出てくるのは、深夜から明け方までだった。最近、アッサルトは薄々気づいたのだが、ゴルフォは何か一人でやっているようだった。そして、それは何故か記憶を共有できなかった。
そして、一昨日、アッサルトは不思議な人物に出会った。
アッサルトが公園のベンチに座っている時、向こうの方で一人の女性が転び、持っていた紙袋から林檎が転げ落ちて地面に散らばった。
アッサルトはすぐに女性の方に走っていき、「大丈夫ですか」と林檎を拾い集めるのを手伝った。
女性は20代後半くらいで、黒髪ロングで怪しげな雰囲気の目をしていた。
「ありがとうございます…」
女性はお礼を言い、林檎を受け取った。そこで立ち去るものだと思っていたが、女性はアッサルトをジッと見つめた。
「何か……?」
アッサルトは少し緊張した。すると、女性はフッと笑った。
「あら……あなた面白いもの持ってるわね」
「?面白いものとは……」
「あら、あなた…もしかして知らないのね?ふふっ、それはそれは」
アッサルトは女性に異様な気配を感じ、身構えた。
「あなたは誰ですか」
女性はそれには答えなかった。ただ立ち去り際にアッサルトの耳元にこう囁いた。
「何かあったら来なさい。力になるわよ。こう呟きなさい、『§§§§」と」
ハッとアッサルトは振り返った。しかし、女性はもうそこにはいなかった。